詰めるなと気付かわれ
「
」は「喉」ですね。「気付く」は、気がつくこと。「きづかう」は、心配すること、案ずることですから、「気遣われ」としなくてはなりません。
中七のところが一字多い「中八字余り」の句が、十数句に上りました。中には三句中二句が中八という方もおられました。字余りは、リズムの切れ味を著しく損ねますので絶対におやめください。全部の添削はご披露できませんので、その一部をご参考までに。
「○○する」という動詞の連用形「○○し」を下五に据えますと、「し止め」と指摘されて、今の川柳界では敬遠されます。このことについてコンパクトに解説した資料がありますので、ご希望の方は川柳係までご連絡ください。
課題「酒」から二つの例を挙げます。
Aは、ちょっとだけと言いながらいつも深酒をしてしまうということなのか? Bは、酒を注ぐ夢を見たので病院を抜け出して外泊して一杯やったということなのか? 作者ご自身は句の意味は十分おわかりなのでしょうが、第三者である読者には伝わってきません。作者の作句意図と違っては失礼になりますので軽々しく改作はできませんが、たとえばこんな句はいかがでしょう。
この句には「将来」に「さき」とルビが振ってありました。お気持ちはわかりますが、この読みは無理。よく見かけるルビに、「姑」(はは)、「夫」(つま)、「瞬間」(とき)などがあります。漢字の表意性に甘えないようにしてください。
川柳を、最も短いことばで定義づければ「人間を575のリズムで詠む文芸」ということになります。形は、俳句と同じ575です。そしてこの575は、日本人の体にもともとしみついているリズムですから、誰でも自然に乗ることができます。
「人間を詠む」と申しました。ここでいう「人間」とは、人間そのもの、人間の営み、人間の形成する社会などを指します。「人間の一切合切」と申し上げるほうがいいかもしれません。人間の強さ弱さ、賢さ愚かさ、正しさ狡さ、温かさ冷たさ、楽しさ悲しさ その他すべてが川柳の素材となります。
「川柳」というと、風刺、皮肉、笑い、ジョークなどを思われる方が多いでしょう。これらは確かに川柳の大切な要素ではありますが、そればかりにこだわらないでください。「笑わせてやろう」「皮肉ってやろう」と構えないでいただきたいのです。見たまま感じたまま思ったままを、口語体でさらっと詠んでくださるようにお願いしておきます。
575のリズム以上に大切なことが二つあります。一つは、人間の尊厳や生命を軽視したり、社会的弱者を揶揄したり、性を下俗に表現することのないように、ということです。二つめは、ダジャレを川柳に持ち込まないでくださいということです。「この鮎は養殖ですか和食です」「IT化いいえわが家は愛低下」などは、ことばの引っかけとしてはおもしろいかもしれませんが、ただそれだけのこと。文芸としての価値はゼロとお考えになってください。
川柳を作る上での心得は他にもいろいろありますが、毎月その都度具体的に申し上げていきましょう。私は、川柳を「納得と共感の一行詩」などとも説明しております。何を詠んだ句なのか、何を言おうとしている575なのかが、一読明快でありますように。
川柳の良さと楽しさを、より十分おわかりいただけるよう努めさせていただきます。
NHK学園川柳講座の編集主幹。昭和5年横浜生まれ。
全日本川柳協会理事。
NHKに入社後、アナウンサー、経営職を経てNHK学園に川柳講座を開設。
"わかる川柳""感じられる川柳""リズム川柳"を唱えて新聞、雑誌、
ラジオなどで選評執筆中。著書に『俊秀流川柳入門』など。